藍色夏恋

■監督■
イー・ツーイェン

■出演■
チェン・ボーリン
グイ・ルンメイ
リャン・シューホイ


★★★★
楽しい高校生活を送るちょっと勝ち気な17歳モンは、ある日、親友のユエチェンから恋の相談を受ける。その相手は水泳部のチャン。彼をよく知らないモンだったが、夜中にユエチェンと一緒に彼が秘密練習をしている学校のプールを訪れた際、恥ずかしがるユエチェンの代わりに初めてチャンに話しかけた。だが思惑と違って、この初対面をきっかけに、チャンはユエチェンではなくモンに好意を抱き始める。そしてある時、ユエチェンからラブレターを渡して欲しいと頼まれたモンは、渋々学校の帰り道で自転車に乗ったチャンを追いかけ、手紙を渡すのだったが・・・。

思春期の3人の男女の初恋をめぐる淡く切ない恋愛模様をノスタルジックに綴った青春ラブ・ストーリー。もうこれはまず題名が凄く良い。藍色した夏の恋。原題は『藍色大門』なんだけど、これを『藍色夏恋』にした日本のスタッフに拍手。造語なんだけど、映画の内容に本当にピッタリの邦題だと思う。

初恋、友情、思い込み、思い違い、片思い、涙、ケンカ、三角関係、進路の悩み、風にゆれる夏服、体育の授業をさぼって将来の話、10年後の自分、夜の学校のプール、自転車で競争する帰り道、かわいい色のペンで書いたラブレター、誰にも言えない気持ちをひたすら綴った壁の落書き、バスケ、机にいたずら、海辺でデート、間接キス、繋いだ手、夜の体育館、秘密をぶっちゃけトーク、恋のおまじない、花火、砂に書いた文字、言えなかった言葉、笑顔・・・これらの青春キーワードにピンっときた人は是非是非。忘れかけた青春を思い出させてくれる映画です。素敵な素敵な青春。ただ、逆に上に挙げたキーワードに「け!何が青春だよ」って思った人は観ないほうがいいかもしれないね。

正直、この映画のストーリーやシチュエーションはベタベタ。複雑なストーリーがあるわけでもなく、ドラマチックな展開も凝った設定があるわけじゃない。それなのに凄くいい映画だなって思えるんだよね。役者の表情や演技、カメラワーク、編集のリズム、音楽、映像、演出がとっても秀逸。複雑なストーリーや凝った設定がなくても、いい映画は撮れる良い見本だと思う。

まず役者の演技。これがホントにいいんだ。活き活きとしてて、大人へ脱皮していく途中の無邪気さ、喜び、不安、いらだちなど、すべての要素がうまく出ている。ほとんど笑顔を見せない主人公のラストシーンでの笑顔。最高だなあ。カメラワークや編集のリズム、音楽もホントに秀逸。そして、夜の青、水面の青、蛍光灯の青、草木の緑、ほうきや堤燈、ゴミ箱やTシャツなど小物の赤。それぞれが作り出すコントラスト。ため息が出るくらいに映像が美しい。特に夜の美しさと言ったらもう。どこを切り取っても素敵な絵葉書になりそうな感じ。素敵だよ。

あと、演出。それぞれのシーンが登場人物の初々しい感情をうまく表しているんだよね。観れば観るほど、よくできた演出だなーって思わせる。特に体育館の告白のシーンがいい。それから、序盤のリン・ユェチェンの部屋に訪れたモン・クーロウが、チャン・シーハオのお面をつけさせられるシーン。モン・クーロウが体を揺さぶり始めると、そのリズムに合わせて映画音楽が鳴り始める。劇中に流れてくるテレビやCDの音に合わせて踊るんではなくて、劇中の人物の動きに合わせて音楽が鳴り始めるの。これが素敵なこと素敵なこと。こういうのいいなあ。

褒めてばっかりだけど、観る人次第でどうとでもとれるように作ってるのも、いい感じ。モンは○○なのか、それとも友達のため?この何が正解で何がハズレか分からない漠然とした感じ。やっぱ青春だね。あと、この映画を観終わったらDVDの特典映像に収録されている、この映画のイメージソング『風色夏恋』のミュージック・クリップを是非観て欲しいな。クラムボンの原田郁子が歌ってるんだけど映画を観終わった後に聴くと泣ける泣ける。いい曲だよ。

映画もホントいい映画だ。ただ、チャンの魅力が僕にはあまり分からなかったかな。まあ、好きになることに理由なんていらないけど、あんな男のどこがいいんだろ。自分でハンサムとか言っちゃったりしてさ。顔のほうも僕の友達に似てて・・・あ、友達がカッコ悪いってわけじゃないよ(笑)
アイデン&ティティ

■監督■
田口トモロヲ

■出演■
峯田和伸
麻生久美子
中村獅堂


★★★
ロックバンドがバンドブームに乗ってメジャーデビュー!でも、レコード会社の指示でやりたくもない音楽をやらされて・・・。現実にもこういうことってメチャクチャあるんだろうなあ。

こういう映画って劇中で使われる音楽の出来も重要(しょぼい曲で客が大盛り上がりしてもね・・・)だと思うんだけど、その辺はまあまあかな。銀杏BOYZの峯田くんの演技はリアルで凄い良かったです。
アカルイミライ

■監督■
黒沢清

■出演■
オダギリジョー
浅野忠信
藤竜也

★★★★

ると未来の夢を見るという仁村雄二(オダギリジョー)は、いつもなにかにイラついていた。そんな彼にとって同僚の有田守(浅野忠信)は、心を許せる唯一の存在だった。ある日守は「嵐が来るかもな」と言い残し、突然姿を消す。そんな雄二の前に、守の父、真一郎(藤竜也)が現れ、雄二はいつしか彼のもとで働き始める。世代も考え方も違う二人だったが、次第に守の残したクラゲを東京の河川で繁殖させるということに熱中していくのだった。ある日、雄二は暴風吹き荒れる砂漠の中で一人歩く夢を見る・・・

若者とオヤジたち、世代
間のギャップを描き、アカルイミライを描いた作品。監督は『CURE』や『回路』を撮った黒沢清。正直、難しい映画で、1回観ただけじゃ、よく分からないかもしれない。だけど、観終わった後に。ふわ〜っと残ってまた観たくなる。中毒性の高い作品です。本当に深い映画。一つ一つのシーンやセリフに全てに意味がある。色々と考えさせられる。

とにかく出演者の演技が凄くいい。そして、主人公であるオダギリジョーと浅野忠信の衣装は退廃的で奇抜なファッション。現実のようで現実とは少し違う御伽話のような世界観を構築するのに一役かっている。要所要所で効果的に使われる音楽もいい。全体的に静かな作中と、エンディングでのTHE BACK HORNのエモーショナルな曲のコントラストも絶妙。

そして、映像。デジタルビデオで撮影された「黒」を極端に強調させた映像と、クラゲの淡く光る赤が、何とも言えないコントラストで、本当に美しい映画だった。この映像だけで、十分素晴らしいんだけど、内容も本当にいい。勇気を与えられる。「アカルイミライ」へのヒントがいっぱい詰まった作品。


-----ここからは軽くネタバレを含みます。まだ観てない人は読まないほうがいいかも。-----

この映画の中では、雄二&守と工場の社長、守の父と守や雄二、守の弟、バイトの子、そして雄二と高校生たち・・・世代間のギャップが描かれています。そういった視点で観ると、この映画は3つのパートに分かれている。

1つ目のパートは、工場の社長と雄二&守。社長は若い2人を家に招いたり、部屋に上がり込んだりして“趣味は何?”、“今度CD貸してよ”などウザい質問を・・・そして、守の手にかかって社長は殺されてしまう(この殺しは雄二を守るため?)。

2つ目のパートは、雄二と守の父・真一郎との擬似親子的な関係。真一郎は行き場をなくした雄二の保護者のような存在になるが、やはりそこにもギャップが。クラゲの増殖が始まり、雄二は徐々に何かに気付いていく。屋根の上(真一郎の作ってきた世界の上)に立って遠くを見ても、そこからは何も見えない。一方、真一郎はクラゲの大群を見つけ大喜びして、守の夢がかなったとはしゃぐ。触れてはいけないクラゲに触れて気を失った真一郎を抱えて、雄二は何かを見つける。そして、雄二は真一郎のもとを去って、自分の世界、アカルイミライに向かって進んでいく。

そして、3つ目のパートは雄二と街で出会った高校生たちの関わり。雄二の手引きで事務所荒らしをする高校生たちは、雄二と違う方向に逃げ、警察に捕まってしまう。釈放された高校生たちは面白いことを求めて町をただただ前へ歩いていく。
革命家チェ・ゲバラのTシャツを着ながら。そこで初めて、「アカルイミライ」っていうタイトルが出てくる。これまでの長いプロローグが終わって、これから新しい物語、アカルイミライが始まるような。

この作品では、クラゲがやっぱり大きな意味を持っていると思う。未来は闇の中。未来は誰にもどうなるか分からない。クラゲは他からの光を求めずに、自ら光るもの。その柔軟な身体で自ら光ながら生きていく。
「アカルイミライ」っていうのは、きっと闇の中の未来に、自ら光り輝くクラゲのこと。幻影から抜け出して、自ら光を出して歩いていく。「イケ!」そこにアカルイミライはあるはずだと思う。

アバウト・シュミット

■監督■
アレクサンダー・ペイン

■出演■
ジャック・ニコルソン
キャシー・ベイツ

★★
保険会社を定年退職したシュミット(ジャック・ニコルソン)は、ひまな毎日に嫌気がさし、チャリティ団体に応募。援助するアフリカの少年に手紙を書く。ところが簡単な自己紹介のつもりが、妻への不満など、グチばかりつづることに。そんなとき妻が急死。愛娘が帰郷するが、彼女が連れてきた婚約者はとんでもないアホだった・・・。

 平凡というかダメオヤジなシュミットの老後の日々を描いた人間ドラマ。ドラマチックな展開があるわけでもなく、ただただ淡々とロードムービーみたいな感じで静かに流れていきます。もう、これはニコルソンの演技が95パーセントくらいを占める映画。そんでまた、そのニコルソンの演技が素晴らしい。

この映画が描いてる老後の孤独感みたいなものは20代の僕には伝わりくいし、若い人よりも年配の人向けの映画だと思うけど、それでもニコルソンの演技に吸い込まれて感情移入してしまった。感情移入さえしてしまえば、きっと最後の何かを見つけたシーンは感動。逆に感情移入できなかったら、淡々と日常が流れてくだけでつまんない・・・ってことになってしまいそう。そんな映画。

そして救いがないようで凄く救いのある映画。周りを見る、広い心を持つことによって世界は広がる。そこにはきっと自分を受け止めてくれる人や場所はあるんだね。まあ、とりあえず僕はシュミットみたいなオヤジにだけはなりたくないな(笑)

ウォーターボーイズ

■監督■
矢口史靖

■出演■
妻夫木聡
玉木宏
金子貴俊
竹中直人
平山綾
真鍋かをり


★★★★★
『アドレナリン・ドライブ』、『ひみつの花園』、『裸足のピクニック』など、ハチャメチャで笑える独特な映画を撮る、矢口史靖監督の作品。
この監督の作品はどれも好きなんだけど、その中でも特に好きな映画。

男子高のダメ水泳部員達がひょんな事から学校の文化祭に男子シンクロで出場する事になり・・・

といったストーリー。え!?男がシンクロ!?って抵抗があるかもしれないけど、笑いあり涙ありの元気な素晴らしい青春映画です。
ゆる〜いギャグセンス、ジェットコースターみたいな物語展開の早さ、テンポの良さ。
メッチャ楽しい。そして最後にはキュンっとなる。最高のエンタテイメント作品です。

役者では、主役の妻夫木聡の演技も凄くいいし、個性的すぎる竹中直人もいい感じ。出てくる人みんなが強烈な個性を放ってました。

シンクロシーンで使用されるPUFFYの『愛のしるし』や、フィンガー5の『学園天国』れたシンクロシーン、
劇中での青江三奈の『伊勢佐木町ブルース』など、音楽も効果的に使用されています。

とにかく元気の出る映画。大傑作です。

打ち上げ花火。
下から見るか?横から見るか?

■監督■
岩井俊二

■出演■
奥菜恵
山崎裕太

★★★★★
ここでも紹介してる『スワロウテイル』や『PiCNiC』の監督の、岩井俊二が93年にフジテレビの番組「ifもしも」(世にも奇妙な物語の続編的な番組)の1本として製作したTVドラマで、日本映画協会新人賞を受賞し、翌94年、劇場公開になった中篇映画。

この作品は『スワロウテイル』や『PiCNiC』とは違い、少年達が主人公の青春映画。
同じ岩井俊二作品だと『四月物語』や『ラブレター』に少し近い感じです。

港町に住む小学生の男の子たちが、「打ち上げ花火を横から見たら丸いのか、平べったいのか」と言い争いになる。
それを確かめるため、花火大会の夜に町はずれの灯台へ行こうと計画する。
憧れの美少女、なずなへの淡い思いが重なって彼らの夏休みは過ぎていく・・・

夏の終わりのあの切ない感じ、小学校の夏休みの情緒、花火大会の情緒が上手く描かれていて、ノスタルジーな気分に浸れます。
この映画、これでもかってくらいに冒険心や初恋の気持ちをくすぐるんだよね。

細かい少年少女の描き方、演技も凄い良いし、岩井俊二らしく、プールのシーン、花火のシーンなど・・・映像も凄く綺麗。音の使い方も絶品。
甘くて切ない、そしてワクワク。子供の頃の感覚を取り戻させてくれるような素敵な映画です。
終盤のプールにシーンがホントに素晴らしい。

『スワロウテイル』を好きな人には不評かもしれないけど、凄くいい作品。お薦め。
es [エス]

■監督■
オリバー・ヒルツェヴィゲル


■出演■
モーリッツ・ブライプトロイ
クリスティアン・ベッケル

★★★★
新聞広告で集められた被験者を「看守役」と「囚人役」に分け、模擬刑務所で生活をさせるというアメリカの大学で実際に行われた心理実験「監獄実験」を映画化した作品。

元記者である主人公が、起死回生のネタとして被験者に応募し、監獄実験を記事にしようとする。しかし、実験が始まると次々に問題が起こり・・・。
「看守役」と「囚人役」を演じる24人の心理状態が次々と変化し、精神的に壊れれていく姿をリアルに描いてて、カナリ怖いです。囚人に課せられた厳しいルーツと罰則には目を覆いたくなる。特に残酷さがエスカレートする後半は・・・。モンスターがギャー!っと現れて人をザクッ!血がダラダラみたいな恐怖映画よりもずっと怖い。それなのに嘘っぽい恋愛映画なんかよりもグッと引き込まれる。それは、きっと人間誰もがこういう醜い部分や狂気をどこかに隠し持ってるからなのかな。観終わった後にいろいろと考えさせられたよ。人間って怖いね。

この恐怖は他の映画じゃなかなか体験できないと思う。『ラン・ローラ・ラン』で知られる主演のモーリッツ・ブライプトロイの演技も素晴らしいし、映像も美しいです。飽きさせない構成も良いと思う。よくできた映画だよ。
ところどころ突っ込みどころもあるし、一般受けのために取ってつけたような恋愛的要素もいらない。後味悪めだし、決して「楽しかった!」っていう映画ではないけど、見る価値は十分ある作品なんじゃないかな。
ELECTRIC DRAGON 8000V

■監督■
石井聰亙


■出演■
浅野忠信
永瀬正敏


★★

子供のときに送電線の鉄塔に登って感電した竜眼寺盛尊(浅野忠信)は電気のパワーを身に付ける。
ケンカで相手をノックダウンするたびに電気治療を受けるのだが、狂暴さは増すばかり…。
やがて、狂暴さをエレキギターで鎮めることができるようになり、今では爬虫類専門のペット探偵として生きている。
そんな彼に挑戦者が現れた。昼間は電気屋、夜は電波を正しく使用しないものに制裁を加える仏像仮面の雷電仏蔵(永瀬正敏)だ。そして二人の戦いが始まる・・・。

・・・とまあ、少年ジャンプの漫画みたいなストーリー。全編を通して大音量でロックが流れる。映像も迫力満点。
この映画を一言で言うとギャーーーーーーン!!!!!!!!バーーーーーーーーン!!!!!
とにかくロックでファイトファイト。ロック特撮B級映画です。メッチャかっこいい。

同じ石井聰亙監督で主演も同じく浅野忠信、永瀬正敏の『五条霊戦記』はちょっと今ひとつだったけど、この映画はいい。 仮面ライダー、ウルトラマン、戦隊ものなどの特撮ものは日本人独自の分野で、最も得意としているところだと思う。この映画は、そんな特撮ものの現代版といった趣き。特撮ものをロックで現代に、しかも白黒でといった発想が素晴らしい。外国人受けも良さそうです。ストーリーを期待する人にはあまり、お勧めできないけど、バカ映画が好きな人や特撮ファン、ロックファン、浅野・永瀬ファンは是非、この電気世界を体験して欲しいです。

黄金の七人

■監督■
マルコ・ヴィカリオ

■出演■
フィリップ・ルロワ
ラッサナ・ポデスタ
ガストーネ・モスキン


★★★

教授と呼ばれる謎の男とオレンジのつなぎを着た6人組と一人の美女がスイス銀行に眠る金塊狙っていた。道路工事を装って、地下から進入、次々と防犯設備を突破して、金塊の眠る金庫へ。しかし・・・

1965年に製作されたイタリア映画。30年以上も前の作品だけど今観ても全然新鮮。おもしろい。

日本人にわかりやすく言うと、まんま実写版の「ルパン三世」。思いっきりルパンの元ネタっぽい。
この映画に出てくる美女なんてセクシーで仲間を平気で裏切ったりと峰不二子そのまんま。ルパン好きにはきっとたまらない映画です。

ストーリーも無駄のない展開で、ドンデン返しに次ぐ、ドンデン返し。結末も意外で面白い。

映像も凄くスタイリッシュだし、アルマンド・トロヴァヨーリによる音楽もサヴァビアをフィーチャーしてたりして、カナリかっこいいです。ダバダバ言ってます。ピチカート好きやFPM好きにはたまらないんじゃないかな。傑作泥棒コメディ。

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