サムライ・フィクション

■監督■
中野裕之

■出演■
風間杜夫
吹越満
布袋寅泰
緒川たまき


★★

ミスチルやサザンなどのPVを撮っていた、中野裕之の処女作品。
モノクロの時代劇。PV出身だけあって、非常にスタイリッシュな時代劇になっています。
映像と現代的な音楽が、うまくシンクロしていて凄くカッコいい。
映像の「静」と「動」の使い分けが上手くて、作品のテンポもいいです。
また、全編モノクロの画面なんだけど、刀で斬るところで血が出る代わりに一瞬だけ画面が赤くなったりするのも面白い。

ストーリーは・・・
宝刀とされる刀を奪って逃げた浪人の風祭(布袋寅泰)と、それを追う藩士の平四郎(吹越満)。
返り討ちに合った平四郎を助けた浪人の溝口(風間杜夫)は、平凡で平和な生活を送っていたが、
風祭に腕を見抜かれ、決闘を申し込まれてしまう・・・

ストーリーは単純で正統派な剣豪もの。
個人的には、こういうPV的なスタイリッシュな映像の映画には、単純なストーリーの時代劇が一番はまると思います。

個性的な登場人物が多くて、結構笑えるところもあって楽しい映画です。
布袋寅泰はメチャクチャこの世界観にはまってたんだけど、演技力はちょっと・・・
その辺はちょっと残念だった・・・

鮫肌男と桃尻女

■監督■
石井克人

■出演■
浅野忠信
小日向しえ
岸部一徳
寺島進
真行寺君枝
鶴見辰吾
我修院達也


★★★★

『バタアシ金魚』『ドラゴンヘッド』などでお馴染みの望月峯太郎の同名漫画をこれまでCMディレクターとして活躍してきた石井克人が映画化した作品。彼の映像作品はいつも絶妙に笑える。今作も笑いいっぱいの楽しい作品になってます。

山のホテルに勤めているトシコ(小日向しえ)は、やくざ組織から1億円を盗んで逃亡している若い男・鮫肌(浅野忠信)に出会う。鮫肌が逃走するのにトシコの車を使ったことから、やくざ組織はトシコを鮫肌の女だと勘違いして追跡の対象に加える。トシコは、ホテルの支配人ソネザキ(島田洋八)から迫害を受けていたので、鮫島と逃亡することを希望する。トシコが男と逃げたと知ったソネザキは嫉妬に狂い、知り合いの殺し屋・山田くん(我修院達也)を雇って…。鮫島とトシコの逃走劇が始まる・・・

この映画をジャンル分けするとバイオレンスになると思うんだけど、普通のバイオレンス映画はとにかくクールに徹しているのに対して、この映画はクールとユーモアが絶妙のバランスで絡み合っている。めちゃくちゃスタイリッシュでカッコいいんだけど、たっぷり笑える。そんな映画です。


とにかく鮫肌役の浅野忠信はかっこいいです。そのカッコよさには劇中で山田くん(男)に惚れられるほど(笑)トシコ役の小日向しえは、モデル出身でこれが映画デビュー作。演技はままだったけど、カナリかわいい。

しかし、この映画でもっとも異彩を放っているのは、ホテルの変態支配人ソネザキを演じた島田洋八と、殺し屋の山田くんを演じた我修院達也(若人あきら)だ。この2人のあまりに強烈な変態的行動やセリフには何度も何度も笑ってしまいます。この2人の他にも、笑撃のスーツを身に纏い、犬並に鼻が利く組長の息子役の鶴見辰吾、ホーロー看板マニアの岸部一徳、神に出会った男、寺島進など個性豊かすぎるキャラがいっぱいでてきて楽しませてくれます。

バイオレンス好きの人からお笑いファンにまでオススメできる傑作です。

自殺サークル

■監督■
園子温

■出演■
石橋凌
永瀬正敏


いつもと変わらない帰宅ラッシュの新宿駅。この日、女子高生54人が手をつないでホームから飛び降りた。同じ頃病院では看護婦の投身自殺が起こり、黒田刑事は事件性を疑う。警察には、自殺者に関係したインターネットのサイトについてコーモリと名乗る女性からのタレこみが入っていた。2日後、学校の屋上から高校生が集団で飛び降りる事件が起こる。増え続ける事件の裏には、ネットに潜む謎の集団の存在があった・・・

園子温監督のホラー・ミステリー映画。感想はとにかく気持ち悪い。気持ち悪すぎる。冒頭の女子高生が手を繋いで電車に突っ込むシーンからエグイエグイ。血が飛びまくり。皮がはがれたり指がちぎれたり人が死にまくり。こんなに気持ち悪い映画を観たのは初めてかも。怖いよ。『リング』や『バトルロワイアル』なんかよりもずっと怖い。あまりの気持ちの悪いシーンの連続に始めは目を覆いたくなったんだけど、映画を観終わる頃にはそんな自殺シーンにもすっかり慣れてしまった自分がまた怖い。これってどうなの。自殺なんて最悪だよ。生きるって大事だよ。

本当に生理的に気持ち悪い映画なんだけど、ストーリーのほうも分けが分からなくて、なんだか気持ち悪い。次々と出てくる謎につられて最後まで観てしまったんだけど・・・。一体何が言いたかったんだろ。ネットや携帯社会へのメッセージもあるようだし、人間の在り方や死ということの意味など哲学的なメッセージを含んでるようにも見えるけど、数々の伏線の繋がりや関係が理解できないし、何が言いたいのかさっぱり。これって支離滅裂に破綻したストーリーを「謎」っていう便利な要素でごまかしてるだけでしょ。意味がありそうで実は意味がない。最近のオシャレ系映画によくあるパターン。エグいシーンで間の抜けた曲を使ったり、唐突にミュージカル風の演出が組み込まれたりなんてのも一生懸命オシャレにしようとしてるのがミエミエで凄く鼻につく。あのミュージカル風の演出は浮きすぎだし取ってつけた感でいっぱいじゃん。

良かったなって思うのは石橋凌の演技。それくらいかなあ。あまりお薦めできる映画ではないね。ただ、とにかくエグイのが好きだって人は見てみるといいかも。
シックス・ストリングス・サムライ

■監督■
ランス・マンギア

■出演■
ジェフリー・ファルコン
ジャスティン・マクガイア


★★★★

一言で言うと、SFカンフー・チャンバラ・ロックンロール・アクション映画(長っ)!メチャクチャ痛快なバカ・アクション映画です。

舞台は時は世紀末。世界は核の炎に包まれ、アメリカはロシアの制圧下にあった。
アメリカ最後の砦ロスト・ヴェガスには「キング」エルヴィスが降臨し、夢の国を築いていた。
しかし、エルヴィスの死を聞きつけた全国のロックウォリアー達が次のキング目指してヴェガスに・・・

ストーリーは単純明快。少年ジャンプ系。この映画は主人公がメチャクチャ強い。優しい。そして馬鹿なことをやってるのに、かっこいい。服装なんて、四角い黒ブチ眼鏡に、よれよれのスーツ。左手にギター、右手にカタナ!
馬鹿っぽいけど、かっこいい。アクションシーンのほうは、ちょっとしょぼい。それなのに何故か、かっこよく見えてくるからアラ不思議。

そして敵も凄い。ボウリングのピンにナイフを隠したボウリング3兄弟や、風神、食人家族など・・・
『マッドマックス』に『子連れ狼』、『スター・ウォーズ』などパロディ満載。
もう漫画以上に漫画っぽいです。痛快。ロックンロールな音楽も最高。
馬鹿映画、アニメ、ゲーム、戦隊もの、ライダーとか、あとELECTRIC DRAGON 8000V、テルマ&イールズなんかを好きな人にお薦めの映画。

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■監督■
ペンエーグ・ラッタナルアーン

■出演■
ラリータ・パンヨーパート
ブラック・ポムトーン


★★★

ちょっと珍しいタイの映画。タイでは年間500万人を動員して大ヒットしたらしいです。タイで500万人ってどのくらい凄いのかよくわからないけど、きっと凄いんだと思う(笑)

ある日、主人公の平凡なOLがリストラされる。翌朝、部屋の前に謎の大金が置かれていた。OLの部屋のドアに付いた番号の「6」がひっくり返って「9」になっていたために、9号室に届けられるはずだったヤクザの取り引きの金がOLの住む6号室に置かれてしまったのだ。OLはその大金の持ち逃げを企てる。ところがそこへヤクザや警官がやって来る。追い詰められたOLははずみで彼らを次々に殺していく…。というB級でブラックなコメディ。

主人公に次々とハプニングが重なっていくんだけど、それに対する主人公の行動がめっちゃ笑える。ネタバレになるから詳しくは書かないけどオチも面白い。個人的にはかなり笑った映画でした。主人公のいい感じのボケ具合がどんどん人が死んでいっちゃう残酷さをユーモアに見事に変えている。

また、ヤクザや警察、同じマンションの住民など他のキャラも個性的すぎでおもしろい。タランティーノ映画や石井克人の『鮫肌男と桃尻女』が好きな人は気に入ると思います。(ちなみにこのDVDの裏には浅野忠信のコメントあり)
でも、どうしてもB級色が強いんで、そういうのがダメな人にはオススメできません。僕的には傑作。

死ぬまでにしたい10のこと

■監督■
イザベル・ヘコット

■出演■
サラ・ポーリー
マーク・ラファロ


★★
ニルヴァーナのラスト公演で出会った男性と初めて恋に落ち、そのまま子供が出来て17歳で結婚。19歳で次女を出産。夫は失業中なので母親の家の裏庭でトレーラー暮らし。父親は10年も刑務所に。そんなパッとしない人生を送ってきた主人公がある日、23歳という若さで余命2ヶ月と宣告される。彼女は死を目前にしながらも、その事実を誰にも明かさず、「死ぬまでしした10つのこと」リストを作って、それを実行していくことで、死の恐怖を回避し、幸せで甘い幕切れを求める・・・。

死に向かっていく女性を描いた人生ドラマです。自暴自棄になったりヒステリックを起こしたりせず、残りの人生を楽しく生きようとする強い彼女の姿に感動。作中で効果的に使われるビーチボーイズの『GOD ONLY KNOWS』に泣けます。ドラマチックな演出や展開で泣かそう泣かそうとしてないところに好感が持てた。ただ、ハリウッド映画だぜ!感動必死!お涙頂戴!な映画を好きな人にとっては、淡々としすぎてるように感じてしまうかも。

題材は良いと思うし、作品自体も凄く丁寧に作られてる。主演のサラ・ポーリーの演技も良いんだけど、23歳で余命2ヶ月、僕はそんな状況に陥ったことなんてないし、イマイチ作品に入り込めなかったっていうのが正直なところ。ネタバレになるから書けないけどリストのうちの大きな1つはどうしても共感できなかったしね。死ぬのが見えてきたら人間ああなっちゃうんだろうか?あれが人間らしさ?アレじゃ、家族はかわいそうだし、相手もかわいそうだよ。僕は絶対にあんなことしない。いくら死ぬからって、あれはちょっと勝手すぎるような。この辺に共感できるか共感できないかで、この作品の印象は大きく変わってきそう。
下妻物語

■監督■
中島哲也

■出演■
深田恭子
土屋アンナ


★★★★★
個人的に大好きな監督、中島哲也の長編映画。嶽本野ばらの原作をポップに映画化した作品です。

早い話がロリータファッションの女の子とヤンキーの女の子の友情物語でストーリーもベタベタなんだけど、見せ方が絶妙。テンポも抜群でお洒落な映像や演出も嫌味に感じないし、散りばめられた笑いのセンスも抜群。難しいことなんて考えずに単純に楽しめる、元気になれる良質のエンタテイメント作品です。

深田恭子自体はそんなに好きじゃないんだけど、これ以上ないくらいに役にはまってるし、土屋アンナのヤンキーっぷりも意外なほどはまってる。篠原涼子や雨上がり決死隊の宮迫などなど脇役陣も素敵。

中島監督が以前に手がけた「世にも奇妙な物語」の「ママ新発売」や濱マイクの「ミスターニッポン〜二十一世紀の男」もそうだったけど、この人の映像センスと演出、笑いのセンスは凄いなあ。今作はそれとベタベタで分かりやすいストーリーが見事にマッチして、ますます輝いた作品になってると思う。

個人的には2004年に観た映画でダントツに好きな作品です。
ジョゼと虎と魚たち

■監督■
犬童一心

■出演■
妻夫木聡
池脇千鶴


★★★★
身体に障害を持つ女の子、ジョゼと今時の情けない男、恒夫。その2人の純粋で切なくて、ちょっぴりファンタジックな恋物語。田辺聖子の同名小説を犬童一心が映画化したものです。

この監督の作品は初めて観るんだけど、嫌味がなく美しい映像といい、独特のテンポといい、シリアスな中にちょこちょこ登場する笑いといい、要所要所でしか流れない音楽の使い方といい、素晴らしい。くるりが担当した音楽も素晴らしい。それでまた主演の2人の演技が良いんだ。どちらも正に振り切れるわけでもなく、悪に振り切れるわけでもなく、非常にリアルな演技を見せてくれる。普段は悪態ばかりついているジョゼが動物園の虎を見たときに見せた嬉しそうな顔。あれは忘れられないよ。

僕は障害者を扱った映画って分かりやすく美談でお涙頂戴!!ってなりがちであまり好きじゃないんだけど、この映画は違うのね。僕がこの映画に深く入り込めたのは、その辺が大きいのかな。
最近のお洒落風邦画にありがちな全部を語らず分かりにくくしとけばOK!みたいな安易な感じではなく、ちゃんと理由があって考える余地が用意されてるのも良い。この映画にはホントに色々考えさせられる。うーん、恋愛って難しいなあ。

起承転結がしっかりあって全てを語ってしまうような映画が好きな人にはあまりお薦めできないけど、いい映画だよ。これは。観もしないで邦画は駄目だ!とか言ってる人も是非是非。邦画もまだまだ捨てたもんじゃないです。
スタンドバイミー

■監督■
ロブ・ライナー

■出演■
ウィル・ウィートン
リバー・フェニックス


★★★★
言わずと知れた青春映画の大傑作。行方不明になった少年の死体を探しに出かけたゴーディを始めとする少年4人の冒険を描いた作品です。原作はスティーブン・キングの自伝的小説。

スティーブン・キング原作の映画はいっぱいあるけど、『シャイニング』、『ショーシャンクの空に』、『ミザリー』、最近では『グリーンマイル』や『アトランティスのこころ』が有名だね。この人の小説は名作が多いと思うんで、そちらを読んでみるのもいいかも。個人的には『IT』っていうミステリー作品がお薦め。

話を映画のほうに戻して、この『スタンドバイミー』はちっちゃい時に冒険ごっこをしたことがあるような人には、きっと堪らない映画なんじゃないかな。見るもの感じるもの全てが新鮮だったあの感じ、子供ならではの苦悩、大人になった今ではなかなか感じることのできない冒険心が、ちょっぴり笑いを盛り込みつつ、いい感じに詰め込まれてます。

柵の向こうの犬、橋の上の汽車、見張り番、体に吸い付くヒル・・・ひとつひとつのエピソードがホントによくできててノスタルジーなツボを突きまくり。何度観てもグッとくる作品です。エンドロールで流れるベン・E・キングの名曲『スタンドバイミー』がまた良いんだ。子供の頃にあった大切なモノを思い出させてくれる作品です。いい映画だよ。青春映画の中でもダントツで好き。
スナッチ

■監督■
ガイ・リッチ-

■出演■
ブラッド・ピット


★★★★★
マドンナの旦那、ガイ・リッチ-監督の『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』に続く長編2作目。
86カラットの大粒ダイヤをめぐる大騒動を描いた傑作クライム・アクション。

ベルギーのアントワープで宝石業者から86カラットのダイヤモンドが強奪された。強奪団の一人フランキーはNYのボス、アビーのもとにダイヤを運ぶ前に、小粒の宝石類を売りさばくためロンドンに立ち寄った。彼は裏社会に生きるロシア人ボリスと会い、非合法ボクシングの賭けに誘われる。元来賭事の大好きなフランキーはいとも簡単にそれに乗るが、実はダイヤ横取りを目論む彼の強盗仲間がボリスに頼んで仕組ませた罠だった。一方、非合法ボクシングのプロモーター、ターキッシュは流浪民からトレーラーを買うよう相棒のトミーを遣いに行かせるが、不良品をつかまされトラブルになる・・・

とにかくテンポが早い。予想外のラストまで一気に駆け抜けます。
映像は凄くスタイリッシュでカメラワークもかっこいい。音楽もいい感じ。
プロットもひねりが利いているし、個性的な登場人物も面白いし、ユーモアとウィットに満ちていて楽しい。
登場人物が多すぎて、初めは、「え!?○○って誰?」ってなるけど、2回目以降が凄く面白い。
何回も観たくなるような映画です。

個人的には満点に近い出来なんだけど・・・
はっきり言って・・・『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』と一緒!
ストーリーも似ているし、映像もそっくり、役者も数人かぶっている。
『ロック、ストック〜』を観た人は新鮮味なんかはないと思う。そこが残念。

同じイギリス発のスタイリッシュな映画だからか『トレイン・スポッティング』と比べられることが多いけど個人的には、こっちのほうが好きだな。『IWGP』や、『木更津キャッツアイ』なんかを好きな人にもお薦めです。
スワロウテイル

■監督■
岩井俊二

■出演■
三上博史
Chara
伊藤 歩
江口洋介
アンディ・ホイ
渡部篤郎
山口智子
大塚寧々


★★★★

舞台は架空の無国籍都市"円都(イェンタウン)”。「円」に群がる貧しい移民であふれる近未来の日本。この街に住む娼婦グリコは母をマフィアに殺された少女と出会い、アゲハ(伊藤歩)と名付けた。アゲハはグリコに思いを寄せるフェイホンたちと暮らし始めた。ある夜、グリコの客が暴れ出し仲間が殺してしまう。そして、彼らは謎のテープを手に入れる。そこには1万円札の偽造データが収められていた。そのテープのおかげで彼らは大金持ちに。フェイホンはグリコの歌手になる夢を叶えようとライブハウスを買い取り、グリコはイェンタウンバンドの人気シンガーになる。その頃、犯罪組織が例のテープの行方を追って動き始める。 一方、スターとなったグリコは悪徳マネージャーの策略にはまり、バンドは解散。アゲハはバラバラになった仲間たちの絆を取り戻すべく、再び偽造紙幣を作り始める。やがて、様々な思いが交錯し予期せぬ大事件が起こる・・・

まず、架空の都市”円都”の世界観が凄い。美術や演出が素晴らしくて、完全に独特の世界を作りだしている。特に廃人の群れるスラム街「阿片街」は特に必見だ。ハンディカメラで撮ったような映像のおかげもあって、本当にあんな場所が存在して、そこに迷い込んだような気分になり、廃人達の姿に本当に恐怖を感じた。また、日本語、英語、中国語が入り混じっているという設定も現実に近いような、でもどこか違う不思議な感覚を与えている。

詩的なセリフも素晴らしい。たとえば、「モノは直したらまた使えるけど人はただ死ぬだけよ。」「そして天国に行くんだ。」 「ママは死んだ時、ママは何処にも行かなかった。ママはただ壊れていた。」「天国はあるんだぜ。でも誰も辿り着けないのさ。」「死んだら魂は空へ飛んでいく。ところが雲に触れた途端、魂は雨になって落ちるんだ。」というセリフの後に雨かっぱを着て横断歩道を渡る子供達が映る。そして「だから、誰も天国なんて見れないのさ。」と言って笑った後、真面目になって「そうやって最後に辿りつく場所を天国っていうならここが天国って訳かい?」このセリフは心に残った。最後に辿り着く場所は”ここ”。”ここ”は天国?天国って何?わからない。複雑な気分だ。これには色々と考えさせられた。

 在日アメリカ人が言う「確かに、両親はアメリカ人だけど、生まれ育ったのもここ日本よ。おまけに、日本のひどい英語教育のおかげで俺はまったく英語が喋れない。こんな俺って日本人?アメリカ人?俺たちこのルックスのお陰で、どこ行っても外人扱いだ。でも、間違いなくこの国で生まれて、この国で育っちたんだ。この国しか祖国がないだろ?要は、産声を上げるときも死ぬときも畳の上ってことよ。あんたたちはいいよ、まだ帰れる祖国があるから。」重要なシーンではないんだけど、このセリフには泣きそうになった。そして、色々と考えさせられた。また中国マフィア役の江口洋介の「日本人はグリコ(Charaの役名とかけている)を食べて強くなった」素晴らしい。

この映画は基本はグリコやアゲハたちの夢を掴もうとする姿を描いたドラマなんだけど、その中に音楽映画、アクション、バイオレンスなど色んな映画のジャンルの要素がゴッタ煮状態で存在している。人によっては内容がばらけすぎだと言うかもしれないが、個人的にはそのゴッタ煮感が良かった。

北野武は、この映画の監督の岩井俊二のことを”綺麗な絵を撮るだけ”と酷評したらしいけど、この『スワロウテイル』は映像や音楽も内容も本当に充実した作品だと思う。間違いなく日本映画の最高峰。

贅沢な骨

■監督■
行定勲

■出演■
麻生久美子
つぐみ
永瀬正敏


★★★★

GO』や『ロックンロール・ミシン』の行定勲監督の作品。
「私は不感症だからあんな仕事ができるのよ」と言うミヤコ(麻生久美子)は、電話1本で男たちとHするホテトル嬢。自閉症気味な同居人サキコ(つぐみ)に仕事をさせずに、生活の面倒を全部見ている。ミヤコはある日、風変わりな男、新谷アキヲ(永瀬正敏)に出会い、初めて女としてSEXの喜びを知る。それから、新谷が2人の部屋を出入りするようになり、3人の間に奇妙な恋愛関係が始まる・・・

作中でミヤコ、サキコ、新谷の3人は←のポスターみたいにミキサーで金魚を飼いだす。淡い青と金魚の赤の対比。これが本当に美しくてため息が出る。いつかスイッチが入ってしまうんじゃないかって儚さが余計に美しく見せる。3人がミキサーの中の3匹の金魚を眺めるシーンなんて本当に良い。

ミヤコ、サキコ、新谷の3人の関係は、ミキサーの中の3匹の金魚に重ねあわされる。
ミヤコとサキコの部屋はミキサー、3人は金魚。喉にウナギの骨が刺さったと言って、口をパクパクしてるミヤコは狭い水槽の中で窒息寸前、苦しくて、あえいでる金魚そのもの。外部から遮断されたミキサーの中(=ミヤコとサキコの部屋)で、孤独や生きることの辛さを感じる3匹の金魚(ミヤコ、サキコ、新谷)。そして、その関係はスイッチを入れると1瞬で壊れてしまう。

3人の演技も本当に良いし、ちょっとした心理描写や行動に凄くリアリティあります。様々な演出も美しい。

サキコと新谷の接点となって、そしてミヤコの嫉妬の原因にもなっていく「ハンプバックス」というバンドのレコード。実はこれは出演者によるバンド。作中にDJとしても登場する朝本浩文プロデュースでCD化されたりもしている。『ロックンロール・ミシン』でも感じたけど、そういう音楽関係の演出もこの監督は巧い。
あと、麻生久美子とつぐみがやたらと可愛いのもポイント(笑)

ラストシーンはとても悲しい。だけど、とても美しい。美しすぎる。答えはない。人それぞれ受け取り方は違うかもしれないけど、僕はあれこそが「贅沢な骨」だと思う。そう考えれば解る。

永瀬正敏のセリフでクサイのがあって、少し恥ずかしかったりするけど、本当に素晴らしい作品だと思う。
ゼブラーマン

■監督■
三池崇史

■出演■
哀川翔
市川由衣


★★★

哀川翔の記念すべき100本目の主演作品らしいんだけど、僕が観た中ではこれが初めての哀川翔。なかなか良い演技をするね。凄く存在感のある演技。

哀川翔が演じるのは34年前に放送打ち切りになった特撮ヒーロー「ゼブラーマン」のコスプレという趣味を持ってる小学校教師、市川。彼の住んでる街で奇妙な事件が多発。それは宇宙人の仕業だと分かるんだけど、ひょんなことからゼブラーマンのコスプレをした市川は宇宙人と戦うことに。ただのコスプレのはずが・・・

監督は三池崇史、脚本は宮藤官九郎ってことで“らしい”作品になってます。先の読めるベタベタなストーリー展開だけど、躍動感のあるアクションシーンと気の効いた脚本がいいアクセントになって最後まで飽きさせない。

特撮ヒーロー映画をB級テイストで真面目に作ったところがこの作品のポイントだね。CGもちょっとしょぼかったりするけど、あれはあれでいい感じのB級感が出て良かったと思う。日本らしさをうまく利用した良作。
蝉祭りの島

■監督■
横山浩幸

■出演■
土屋久美子
吉村実子
北村一輝
桑野信義
長島慶造
竹中直人(友情出演)
もちづきる美


★★★

物語の主人公はストリッパーの珠子(土屋久美子)。お腹に子供がいるんだけど夫の卓(北村一輝)は働こうとしない。ある日、卓が珍しい蝉「わしわし」を追いかけていくうちに車にはねられ事故死してしまう。未亡人になってしまった珠子は、お骨を抱いて夫の故郷である能古島に渡る。珠子は島に着いた途端、島民たちに小説家の秋山陽子と間違えられて大歓迎を受ける。お調子者の珠子は、秋山陽子になりきってみたものの、本物が現れて島の人々は今度は珠子を白い目で見始める。しして、それがきっかけで、同じように島で孤立している義母との間に絆が生まれていく。そんなある日、義母ウシヲから死んだ魂がお盆の頃「わしわし」という蝉の姿で島に帰ってきて鳴くという”蝉祭り”の伝説を聞く。島を離れて卓が死んだことをウシヲに伝えることができないでいた珠子はドキリとする。そして、蝉祭りの日、ふらふらと訪れた神社の境内で珠子は死んだはずの卓を見かけて後を追うがその姿はいつの間にか蝉に変わる・・・

とにかく主演の土屋久美子がいい。派手なメイクやタトゥーなどで着飾っている珠子が、真夏の空の下、汗をかきながら働いている時、ふと素顔がのぞく時、その素顔がメチャクチャかわいい。ヒモ同然の夫が事故死、お腹の中には子供。メチャクチャ不幸なのに明るく本能のままにロクデナシに生きている姿はとても魅力的で、観ているうちにどんどん心惹かれる。

物語は中盤以降、あらゆる登場人物のあらゆる愛が複雑に絡み合い急展開する。特に殊子とウシオの愛、殊子と後半に登場する少年の愛がいい。どちらも素晴らしい人間愛が描かれている。最近、親の子に対する虐待や殺人事件が増えてきた。そんな世の中だから余計にこの映画で描かれる人間愛が心に強く響いてくる。後半はセリフや行動でより強く人間愛が表現されていて涙無しでは観れない。

同じく南の島が舞台と同じく本能のままの人間愛を描いた傑作です。それにしてもこんな島に行ってみたいなー。

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