ハイ・フィデリティ

■監督■
スティーブン・フリアーズ

■出演■
ジョン・キューザック
ティム・ロビンス
ジャック・ブラック
トッド・ルイソ


★★

世界中でベストセラーになった原作を、主演のジョンが、スティーブン・フリアーズ監督に依頼して映画化した作品。

 中古レコード店を経営するロブ(ジョン・キューザック)が、同棲していた恋人のローラが突然出ていったことをきっかけに、これまでの失恋トップ5の女性たちを訪ね歩き、自分の何がいけなかったのかを問いただしていく・・・
音楽オタクでダメ男の主人公が人生に対して前向きに進む姿を描く、ヒューマン・ラブ・コメディ。

レコード屋が舞台の話だけあって、劇中音楽からセリフ、貼ってあるポスターにまで音楽ネタが盛り沢山。
マーヴィン・ゲイ、グリーンデイ、スラッシュ、クィーン、スティービー・ワンダー、エルトン・ジョン、坂本龍一、ジザメリ、ベル&セバスチャン、ベータバンド、マッシブアタック、チャーリーリッチ、ローリングストーンズ、ステレオラブ、キンクス、ケミカルブラザーズ・・・グリーンデイが影響を受けたバンドのくだりや、レコード屋に来た客に話すウンチクとかが楽しい。

主人公とレコ-ド屋でバイトする個性的な2人は何でもベスト5を付けたがる。A面1曲目のベスト5から、スティービーワンダーの駄曲ベスト5、失恋ベスト5、死を歌ったベスト5まで・・・そして、あのマーヴィン・ゲイの『LET'S GET IT ON』が意表をついて登場するシーンはホント鳥肌が立ちます。

恋愛ネタのほうも、 主人公が等身大で凄く感情移入できる。現実的な設定もいい。ウォーミングなラブストーリーで観終わった後に、暖かい気持ちになります。まあでも、僕はあんな男にはなりたくないな・・・(笑)

個人的には大好きな映画。でも、上に挙げたアーティストを全く知らないような人的には、おもしろさ半減かも・・・
洋楽好きは是非、観て欲しいです。あと、誰かのために編集テープやMDを作ったことある人も是非観て欲しいです。原作も面白い。映画を観た後に原作を読むと、なおいいと思います。

八月のかりゆし

■監督■
高橋巌

■出演■
松田龍平
末永遥
TAMA
斉藤和義
村山富一


“ユタ”と呼ばれる霊能者の母を亡くした高校生・テル(松田龍平)。親戚の謝花家を頼って沖縄に訪れた彼は、この世のものでないものが見えてしまう従姉妹・マレニ(末永遥)と出会う。そこで巻き起こった不思議な物語。

僕の大好きな沖縄を舞台にした映画です。同じく沖縄を舞台にした『ナヴィの恋』が良かったんで、これも楽しみにしてたんだけど・・・。この映画は、沖縄の風景や民俗学、ファンタジー、ロードムービー、恋愛、戦争、アート、音楽・・・いろんな要素が盛り沢山。個人的にはそういうゴチャゴチャした感じは好きなんだけど、この映画はそれぞれの要素が全部中途半端なんだよね。ファンタジーとしてもロードムービーとしても恋愛モノとしても中途半端。戦争の要素も取って付けた感があってイマイチだった。なんか沖縄、ファンタジー、恋愛、戦争・・・って流行りのものをとりあえず詰め込んどきました的な安っぽさでいっぱいの映画。まるで流行に乗ってヒットチャートを狙ったしょぼいミクスチャー・バンドみたいだよ。

他にも不満がいっぱい。役者にミュージシャンのTAMA(元ヒステリック・ブルー)、斉藤和義、あと元首相の村山富一など素人同然の人を多く起用してるんだけど、松田龍平と末永遥も含めて、みんな演技が素人っぽかったり、わざとらしかったり。これは監督が素っぽさを出したかったのかもしれないけど個人的には違和感が残った。

あとストーリー。2回通り観たんだけど、よく分からない。登場人物の心理描写も少なくて、どこに気持ちを持っていけばいいか分からない。深みがあるように見せかけてわざとそうやってるんだろうけど他がしっかりしてないから、ただ分かりにくいだけの映画になってしまってるような。観る側はおいてきぼり。最近の邦画にはそういうのが多いけど、分かりにくくすればいいってもんじゃないよ。

沖縄を舞台にファンタジーって目の付け所は凄く良いと思うんだけどな。残念。良かったのは斉藤和義による劇中の音楽(非沖縄音楽)と沖縄の風景くらいかな。そんな感じの映画。あ、忘れてた。もしこれから観る人がいたらエンドロールの後まで観たほうがいいかも。
バッファロー66

■監督■
ヴィンセント・ギャロ

■出演■
ヴィンセント・ギャロ
クリスティーナ・リッチ


★★
俳優、画家、写真家、ミュージシャン、バイク・レーサー、ファッション・モデルなど、マルチに活動するヴィンセント・ギャロの監督・脚本・音楽・主演作品。ギャロが作ってるだけあって、最高にスタイリッシュ。

独特のカット割りや色彩感覚、劇中の色んな場面で、そのスタイリッシュさに唸らされます。音楽の使い方も上手い。そして、ただのスタイリッシュなだけの映画ではなくて、ストーリーや登場する人のキャラクターも良くて、本当に良い映画。
最高にキュートなラヴ・ストーリーです。

ストーリーは・・・
無実の罪から釈放されたビリー・ブラウン(ヴィンセント・ギャロ)は、牢屋に入っている間を両親に、「政府の仕事で遠くに行っていた」と偽っていたが、「妻を連れて帰る」と約束してしまう。
その嘘を取り繕うために、通りがかったレイラ(クリスティーナ・リッチ)を拉致し、「両親の前で妻のふりをしろ」と脅迫する・・・

悪ぶっているんだけど、実は素朴で純粋で不器用なビリーがレイラに恋をして、だんだんと距離が縮まっていく姿に、こっちまで笑顔になってきます。そして、キス・シーンが最高。めちゃくちゃハッピーな気持ちになれる映画です。大好き。
ハリウッド★ホンコン

■監督■
フルーツ・チャン

■出演■
ジョウ・シュン
グレン・チン


★★

『メイド・イン・ホンコン』で有名なフルーツ・チャン監督の作品。物語の舞台は九龍ダイアモンドヒルにある巨大ショッピングセンター「プラザ・ハリウッド」に隣接する、スラム街ダイホム村。そこで焼豚屋を営むチュウ親子、出会い系サイトを運営する青年ウォンが、上海からやってきた美しい女の子に魅了される。やがてウォンらは事件に巻き込まれ、上海娘の意外な正体が明らかに・・・。

前半はファンタジックな恋の物語かと思ったんだけど、話が進むにつれてブラックでちょっと猟奇的な内容に。いろんな意味で気持ち悪い映画だった。生理的に気持ち悪いシーンもあるし、話もふわふわしてて気持ち悪い。僕はついつい最後まで観てしまったけど、駄目な人はトコトン駄目な映画かもね。

ガチャガチャしたスラム街から見える近代的な建物(プラザ・ハリウッド)、このなんか不思議な舞台とグリム童話みたいな残酷さも持ったストーリー、全編に漂う淡くカラフルな色合いが一体となった独特の世界観は素晴らしいと思う。ブラックな笑いが好きな人は笑える部分がちょこちょこあると思う。

ただね、メッセージがよく分かんない。このメッセージ性がふわふわしてるのも、この映画の魅力?いや、たぶん「大陸と香港」の関係を描いてるんだと思う。この監督はこれまでの作品でも香港社会と大陸(中国本土)との関係を描いてきてるし、今作もたぶんそうなんだろうなってのは分かる。くっついた腕はきっと香港を表してるんだよね?でも、その辺は日本で暮らしてきて香港に対する知識も関心もあまりなかった僕には伝わりにくかった。

きっと映像やブラックな感じは日本人好みな映画だと思うけど、メッセージ性という観点から見ると、ちょっと日本人には伝わりにくい作品だと思うな。まあ、僕はこれを観て、ちょっと香港の問題に興味を持ったことは事実だし、これはこれで良かったのかも。

PiCNiC

■監督■
岩井俊二


■出演■
Chara
浅野忠信
橋爪浩一


★★

殺人で精神病院に運び込まれた少女ココ(Chara)。彼女は自分の死が世界の終りと信じているが、地球の滅亡を信じて聖書の黙示録に触発されたツムジ(浅野 忠信)に出合い、ツムジが地球滅亡の日と決めた7/10に地球の最期を見るためにサトル(橋爪 浩一)と3人で旅を始める。塀の外に出ることは禁じられているので塀の上をつたい塀から塀へと旅を続けるというストーリーの作品。

公開は96年なんだけど、撮影は94年。オウム事件の影響で96年まで見送られたらしい。それでも何シーンかカットされている。またこの映画は浅野忠信とCharaが付き合うきっかけとなった作品としても有名だ。

 『スワロウテイル』もそうだけど、この監督の作品は演出がいい。花のシーン、雨のシーン、最後の夕日のシーンなどは本当に素晴らしい。Charaの真っ黒な衣装も良かった。ただ塀から落ちるシーンは突然すぎて…。

きっとサトルの存在は賛否両論があると思うんだけど、サトルという全く救われない人という存在があるおかげで、”救い”がより強く感じられると思うんで必要だと思います。

そして、この映画はラストシーンのためにあると言っても過言じゃないと思います。世界最後のシーン。とにかく美しい。地球最後のキスシーン、そして「もう一人の自分を殺した私も人殺しだ。」「あんたの罪を洗い流してあげる。」などのセリフ。自分の死が世界の終わりと信じるココがツムジを愛するゆえにとった行動、映像、すべて美しい。それまで、あまり動かない映像が続いていたためにラストシーンが余計に劇的に写る。このラストシーンを是非観て欲しいです。

ひなぎく

■監督■
ヴェラ・ヒティロヴァー


■出演■
イヴァナ・カルバノヴァー
イトカ・チェルホヴァー


★★★

キャッチコピーは「ウソとバカ騒ぎとお気楽さだけの女の子二人のハチャメチャ行状記。オシャレして、男だまして食べ放題……。泣きまねして逃げちゃえ!映画の画面もハサミでちょん切って、色もメチャクチャ。キレイでしょ。私たち生きているのよ 生きてる! 生きてる!」

ホントこのキャッチコピーがピッタリの60年代にチェコで作られた映画。
とにかくハチャメチャ!とにかくキュート!とにかくポップ!
2人の女の子が巻き起こすお気楽映画。
観終わった後にちょっぴり素敵な気分になれます。

前衛的なカメラワーク、鮮やかな色使い、キュートすぎるファッションやセリフ、ラウンジーな音楽。どれをとってもホント素敵。ほんと彼女たちのファッションも可愛すぎ。ファッションの参考に見てみるのもいいかも。映像&音楽も素晴らしくてBGVとしてもいい感じ。

それでいて反政府的な皮肉も込められてたりしてるのも良いね。岡崎京子とか60年代のポップカルチャーを好きな人は観ておいたほうがいいかも。

ピンポン

■監督■
曽利文彦

■出演■
窪塚洋介
ARATA
中村獅童


松本大洋の漫画の映画化。題名どおり「卓球」を題材にした青春ドラマ。

卓球が大好きで自分の才能に自信をもっている天真爛漫なペコこと星野裕(窪塚洋介)と、卓球は死ぬまで暇つぶしという何事にも無感動・無関心なスマイルこと月本誠(ARATA)は幼なじみ。2人は片瀬高校卓球部のレギュラーだが、練習にも参加せず、ペコは近所の卓球場「タムラ」にくる客をカケ卓球のカモにし、スマイルはその近くで黙々とルービックキューブをする毎日を送っていた。ペコとスマイルが試合をすると必ずペコが勝つ。スマイルは幼いころからの自分のヒーローであるペコに勝ちたいとは思わない。しかし顧問の小泉(竹中直人)はスマイルの才能に気づき、国際級の選手に育てようと1人意気込む。しかし特訓を強制させられ、卓球に熱くなることに苦痛を感じるスマイルは不満がたまるいっぽう。ペコも認められないことへのいらだちを隠そうとさらに練習をさぼってばかりだった。その頃、ライバル高では中国から復活をかけてやってきた留学生チャイナ(サム・リー)、インターハイ優勝のドラゴン(中村獅童)、ペコたちの幼なじみのアクマ(大倉孝二)がそれぞれの野望と思いの中、練習に励んでいた・・・。

漫画やゲーム、小説に原作がある映画って、原作のイメージもあるし作りにくい。だけど、この作品は原作の雰囲気はよく出していると思う。キャスティングもバッチリでペコ(窪塚洋介)もスマイル(ARATA)もドラゴン(中村獅童)も本当によくハマってると思う。この辺は完璧。あと、脇役の竹中直人や夏木マリも良かった。

原作の大きなポイントは活き活きとした会話と、爽快でスピード感のある試合。前者は脚本の宮藤官九郎のおかげか、ペコたちのセリフの掛け合いは、とってもユーモアがあって活き活きとしていて、よく再現できていた。後者はCGを使って再現。卓球台の上を猛スピードでピンポン球が往復していくんだけど、そのピンポン球の軌道をCGで作っている。これは本当に爽快。試合シーンがスピーディーで本当にかっこいい。この点は原作以上かも。ホント正しいCGの使い方。そして、この映画で忘れちゃいけないのは音楽。一般的には有名じゃないかもしれないけど日本のテクノ、ポストロック・シーンの大物の曲が多く使われていて、作品に活き活きした感じ、スピード感を出すのに一役買っている。参加しているのは、SUPERCARからSUBTLE、石野卓球、DUB SQUAD、GROUP、WORLD FAMOUS、CICADA、砂原良徳・・・僕の好きなアーティストばかり。どのアーティストも本当に素晴らしいんで、この作品のサントラも是非聴いてみて欲しいな。ちなみにその辺のアーティストの作品はMUSICのページのほうでレビューしてるんで、気になった人はそちらも見てもらえると嬉しいな。

ただ、約2時間の映画じゃ、すべてを表現しきれてない感じがした。無理矢理2時間に押し込んだ感じ。ちょっと物足りない。最近の邦画にしてはストーリーもわかり易くて、普通に楽しい。元気を貰える。泣ける。スカっと爽快。でも、これは映画じゃなくて連続ドラマにしたら、もっと良かったような気がしないでもないな。
ファイトクラブ

■監督■
デヴィッド・フィンチャー

■出演■
ブラッド・ピット
エドワード・ノートン


★★★★★
あの『セブン』の監督、デヴィッド・フィンチャー監督が再び、ブラッド・ピットと組んだ作品。

不眠症に悩む若きエリートのジャック。彼の空虚な生活は謎の男、タイラーと出会ってから一変する。自宅が火事になり、焼け出されたジャックはタイラーの家へ居候することに。「お互いに殴り合う」というファイトにはまっていく二人のもとに、ファイト目当ての男たちが集いあうようになる。そして秘密組織“ファイト・クラブ”がつくられた。そして、この組織はタイラーの指導下でテロリスト集団に変貌。テロを阻止しようとするジャックだったが、タイラーは突然姿を消してしまう…。

おっと、この映画のストーリーに関してはあまり書いたらいけない。この映画を初めて観るときはなるべくネタバレがない状態で観たほうがいい。この映画はとにかく面白い。暴力描写が結構あって、それが駄目な人はいると思うけど是非、観てほしい。2度以上観てほしい。ストーリー、映像の仕掛けが本当によくできている。映像やダスト・ブラザーズによる音楽、そして衣装などはとってもスタイリッシュでかっこいい。オープニング映像なんて本当にかっこいいし、CGの使い方やサブリミナルなど映像に遊び心もいっぱいで面白い。ブラッド・ピットを始めとする出演者の演技も本当に素晴らしい。そして何よりも話の内容が素晴らしい。

タイラーの作った「ファイトクラブ」は名乗りを上げた者同士が「ストップ!」の声を上げるまで、素手の1対1で殴り合いを続ける。クラブに集まる男達はごくごく普通の会社員や労働者。「生きる実感」を失くしかけてた彼らは「ファイトクラブ」に参加することによって「生きる実感」を取り戻す。

この映画はただ、殴りあうだけの暴力的映画ではない。たしかに殴りあうシーンは観ていて痛々しかった。でも、よく観たら解る。この映画は殴りあうことを肯定してるわけではなくて、むしろ否定してるのだと思う。この暴力は他人を痛めつけてるわけではない。自分を痛めつけてるのだと思う。自分を痛めつけ、痛みと直面し、痛みを味わっている生きている自分に直面する。逆にエンジェル・フェイスを殴るシーン、あそこは「ファイトクラブ」な自分に向けての暴力とは違って、他人(エンジェル・フェイス)に対する怒りのこもった暴力。この時、主人公は「ファイトクラブ」で殴りあった時の表情とは違って、空虚の表情をしている。周りで見守る男たちも苦痛の表情を浮かべている。他人に向ける暴力は無意味だと主張している。

「ファイト・クラブ」は暴力肯定映画どころか、むしろ人間の内面にある暴力衝動をどこに向けるのかが重要であると提示している作品だと思う。この映画は暴力的な映画なので青少年に悪い影響を与える。上映すべきではないって意見が各国で巻き起こってたみたいだけど、そもそも、暴力シーンが全くない映画で、暴力反対を描くことは無理だと思う。何かを否定するときは、その何かをきちんと描かないとできない。世の中の無駄な暴力を失くすには、映画などの暴力シーンを失くすんじゃなくて、しっかりと暴力の痛みを描く。そっちのほうがいいような気がする。包み隠すことが正しいとは限らない。

・・・とまあ、色んなことを考えさせられたりもするし、純粋に楽しむこともできる。ストーリーの仕掛けにはアッと思わされる。映像的にも優れている。本当によくできた映画だと思う。
不思議惑星キン・ザ・ザ

■監督■
ゲオルギー・ダネリヤ

■出演■
スタニスラフ・リュブシン
エヴゲーニー・レオノフ


★★
1986年、ペレストロイカ期のソ連で作られたSF映画。

妻に買い物を頼まれたマシコフは、街でゲデバンに声をかけられた。自分は異星人だという裸足の男の相手をするうちに、マシコフは彼の持つ空間移動装置のボタンを押してしまう。次の瞬間、マシコフとゲデバンは砂漠の真ん中にたたずんでいた。そこに、奇妙な飛行物体が現れ、その中から「ク〜」としか言わない奇妙な男たちが現れた。その奇妙な男たちと行動を共にしたマシコフたちは、その星がキン・ザ・ザ星雲の惑星ブリュクであることを知る。このブリュクの人々は厳しい階級制度に縛られて暮らしていた。でも、そこではなぜかマッチが異常なほどの貴重品でとされ、マッチを持つ者が支配階級であるばかりでなく、マッチ数本で宇宙船すら買えてしまうのだった。マッチを駆使し、この不思議な星で地球へ帰るべく悪戦苦闘するマシコフとゲデバン、その二人の運命は・・・

SFって言っても、『スター・ウォーズ』みたいな大作じゃなくて、とことんチープ。(宇宙船なんてありえないくらいショボイ・・・)。音楽も牧歌的、効果音もチープでほのぼの。そして、映画全編がシュールでチープなギャグで埋め尽くされている。

最初はそのギャグに笑ってるんだけど、じっくり深読みして観ていると、実は物不足と身分の差に悩まされ続けた、ソ連の社会主義への痛烈な皮肉が込められた深い内容なことに気付きます。
そんな暗いテーマでも、悲観的にならずに、奇妙で、どこか憎めないキャラや設定によって明るく表現しているところが、この映画のいいところ。

『スターウォーズ』なんかが好きな人には、ただのショボイSFでしかないかもしれないけど、僕的には好きなSF映画。
ブラス!

■監督■
マーク・ハーマン

■出演■
ユアン・マクレガ−
ピート・ポスルスウェイト


★★★★★
イギリスはヨークシャー地方にある廃坑目前の炭坑。その町にあるダニー率いる炭坑夫たちの伝統のブラスバンド「グレムリー・コリアリー・バンド」の物語。

ダニーは全英選手権優勝を夢に見ている。一方メンバーは町が廃坑問題に揺れている中、それぞれ家庭や仕事に問題を抱えてバンドどころではないのだ。
失業の危機に怯えたメンバー達のまとまらないバンドの練習。もはやバンド解散の雰囲気。
そんなある日、一人の女性がバンドの練習に加わって活気が出るが・・・

凄くいい作品。物語も素晴らしいし、たびたび登場するブラスバンドの演奏シーンもいい。
感動させられる場面も多々あります。特にラストシーンは感動。

「音楽」を通じて、人々の心が繋がっていく。「音楽」の素晴らしさを改めて、感じれる映画です。
「音楽」好きな人は是非、観て欲しいです。
ブリスター

■監督■
須賀大観

■出演■
伊藤英明
真田麻垂美


★★
“ブリスター”とは、 ブリスターパック、 つまりアクションフィギュアのこと。アクションフィギュアの熱烈なコレクターであるユウジ(伊藤英明)は 世界中のマニアの間で伝説となっているフィギュア「ヘルバンカー」を探していた。ユウジの彼女・マミ(真田麻垂美)もそのマニアぶりには複雑な心境。一方、 未来の砂漠では一体のフィギュアを巡り、 賢者・フリーボーンが戦士たちと激しい争いを繰り広げていた。やがてストーリーは現代、 未来と時空を超え、 驚愕の真実が明らかになっていく・・・。

早い話がオタク青春映画。フィギア以外にもSF映画マニアやレア物マニアなどなどオタクな登場人物がいっぱい登場。彼らの「ヘルバンカー」争奪戦をオタクならではの苦悩や恋愛も盛り込みつつコメディ・タッチに描いてます。ストーリー自体はベタベタな感じ。サクっと観れるんで暇つぶしにはいいかもね。個人的には前半はなかなか楽しめた。後半はちょっとあっさりし過ぎな感も。

あと、ちょっと監督のやりたいことが見えてこないというか。たぶん、やりたいことがいっぱいあって、なんでもかんでも詰め込みすぎなんだよね。途中にSFやアメコミみたいな映像が挿入されたりするのもスタイリッシュな映画にするのを狙ってるんだろうけど、最近の単館系映画にはありがちすぎる手法だし狙いすぎな感も、てか、あの未来のSFシーンはそんなに必要かな。最後のアレもこじつけにしか思えなかった。あと、あの安ドラマみたいな恋愛要素もどうかと。どうせなら、もっとオタクに焦点を当てて欲しかったかな。目の付け所はいいと思うんだけどなあ。
blue

■監督■
安藤尋

■出演■
市川美日子
小西真奈美
今宿麻美
村上淳


海辺のある地方の女子高。桐島カヤ子(市川美日子)はミステリアスな同級生、遠藤雅美(小西真奈美)に憧れ、恋心を抱くようになり、やがて二人は仲良くなっていく。しかし、夏休みを迎え、雅美はこの街にいなかった。カヤ子は、雅美の過去を知る友人(今宿麻美)から去年彼女が停学になった理由は、だらしない年上の男(村上淳)と付き合っていた事が原因だと知り、ショックを受ける・・・。

魚喃キリコの同名漫画を安藤尋監督が映画化。美しく淡々と少女たちの淡い恋心や嫉妬、未来の自分、激しく揺れ動くリアルな感情を描いた青春映画。村上淳もチョコっと出演したりしてるんだけど、基本的には市川美日子と小西真奈美しか出てこない。2人の多感な時期の女の子の気持ちをリアルに描いてて、どちらかと言うと女の子が観たほうが響いてくる映画かな。あと、あまり大きな展開もなくテンポも終始ゆったりしてるんで駄目な人はトコトン駄目かもね。

出演者の演技と自然光を活かした美しい映像、大友良映による音楽はどれも素晴らしかったけどね。凄く静かな映画なんだけど、要所要所で大友良映によく音が効果的に使われてたのが印象的。美しい映像ともよく合っていた。音楽(サントラ)についてはMUSICのページ(こちら)でレビューもしてるんで、そっちも覗いてもらえると嬉しいです。

あと、演技に関しては特に巧い!!ってわけではないけど、それぞれ存在感が強烈で淡く淡々とした映画の中で光ってた。特に小西真奈美がいい。ココリコの番組でコントをやってるけど、やっぱりこの人は映画のほうが向いてるよ。(AZTEC CAMERAの発音はちょっとどうかと思ったけどね。でもあれは○○の趣味の影響を受けてたことの複線なのかな。)あと、モデルの今宿麻美もチョコっと出演してるけど、なかなかいい感じでもっといっぱい役者もやったらいいのになって思ったり。市川美日子に関しては初めてちゃんと演技を観たんだけど凄く素敵だった。段々と強い意志を持って成長していく市川美日子の演技、表情は見ごたえあり。それにしても、TSUKI NO WAっていうバンドの『MOON BEAMS』(レビュー)って作品にポエトリー・リーディングで参加してたときも思ったけど、市川美日子の声や喋り方ってUAにそっくりだね。

個人的に好きなシーンはやっぱりラストの「blue」の意味が分かるシーン。青くて美しくて切なくてジーンとするね。もう取り戻せないあの頃のあの気持ち。青くてピュアな思春期を送った人、特に女の子はグッとくる作品なんじゃないかな。
ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ

■監督■
ジョン・キャメロン・ミッチェル

■出演■
ジョン・キャメロン・ミッチェル
スティーブン・トラスク


★★★★
東西冷戦時代に性転換手術をして東ドイツからアメリカへとやってきたヘドウィグは、手術のミスで残された股間の「怒りの1インチ」に苦悩し続けながらも、ロックシンガーとして活動を続けていくが・・・。

 一言で言うと、ドラッグクイーンな主人公ヘドウィグの普遍的な愛を描いたグラムロックなミュージカル映画かな。この映画は回想シーンを交えながら、ヘドウィグの苦悩と怒り、そして愛に満ちた半生が歌われていく。悩み苦しみ、戦い、性別や思想の壁をぶち破っていくヘドウィグの姿には本当に胸を打たれる。

ミュージカルってストーリーはいいのに曲が・・・とか、曲がいいのにストーリーがなあ・・・ってことが結構多いと思うんだけど、この映画はストーリーと音楽が共に秀逸。ただ愛を描いてるだけじゃなくて、その中に権力に対する批判など考えさせられるようなメッセージが込められてるのもいい。

音楽はポップで時にセンチメンタル、時にパンキッシュなグラムロック。デヴィッドボウイとかを好きな人にはたまらないんじゃないかな。ここまでサントラが欲しいと思った映画は『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』が初めてかも。脚本、監督と主演までを務めるジョン・キャメロン・ミッチェル、いや、ヘドウィグの歌がまた良いんだ。ライブパフォーマンスもセクシーで最高。

カメラワークや演出なんかも素晴らしくて1本の壮大なPVとしても楽しめる感じだね。映画としても音楽PVとしてもいい感じ。レンタルで観たんだけど、これはDVDが欲しいなあ。何度も何度も観たくなるよ。DVDのメニュー画面も凝ってて、いい感じだしね。サントラとDVD両方欲しいよ。ホント秀作。

ただ、歌はもちろん英語、字幕は出るんだけど、それだと耳から入ってくる歌と歌詞がなかなかダイレクトに繋がらないんだよね。仕方ないことだけど、英語が分かる人のほうがより楽しめる作品ではあると思う。英語が分かれば、もっと響いてきてたんだろうな。英語+字幕でも十分泣けるけどね。日本人であることが残念。まあ、僕がもっと英語を勉強しろって話だけど(笑)
ほえる犬は噛まない

■監督■
ポン・ジュノ

■出演■
イ・ソンジェ
ペ・ドゥナ


★★★
郊外にあるペット禁止のマンションで、連続小犬失踪事件が発生。そんな事件を巡り、大学教授を目指すユンジュ、事件の犯人を目撃したことから、以前から憧れていた正義のヒロインに近づけそうなヒョンナムを始めとする個性豊かなキャラクターたちが、巻き起こすユーモア溢れるブラックコメディ映画。

クスクス笑える場面がいっぱい。ユンジュとヒョンアム、主役の2人以外にもヘンテコで楽しいキャラクターがいっぱい。テンポも良くて、ポップな映像やバックで流れる小気味の良いジャズもいい感じ。主演のイ・ソンジェの演技も素敵だね。アクション要素があるかと思ったら泣けるシーンもあったりで盛り沢山。それでも脚本がよく出来てて、バラバラのようでストーリーはちゃんと筋が通ってる。

この雰囲気は独特だね。ハリウッド映画やフランス映画、タイ映画やインド映画、日本映画にもない感じ。かと言って他の韓国映画ともちょっと違う。ほんと唯一無ニ。

それだけに、好き嫌いの分かれてしまう映画だと思う。ちょっと韓国の文化が分からないと笑えない部分、ハテナな部分があるしね。あと、犬好きな人にはショッキングな場面がいっぱいで気分が悪くなっちゃうかもしれない。犬好きな人はホントに要注意!普通の映画に飽きた人やブラックな笑いが好きな人、シュールな笑いが好きな人は観てみるといいかもね。僕は普通に楽しめたよ。
ポストマン・ブルース

■監督■
SABU

■出演■
堤真一
遠山景織子
大杉漣
堀部圭亮


★★
『弾丸ランナー』、『MONDAY』などのSABU監督の作品。出演している人たちもSABU作品で御馴染みの人ばかり。今作もSABU作品らしく、「笑い」と「切なさ」が共存する作品。映像はスタイリッシュ。SABU作品はどれも面白いけど、その中でも特に面白い作品。

ストーリーは・・・
マンネリ化した毎日に不満ぎみな郵便局員の主人公(堤真一)。ある日、配達する届け物が高校時代の友達宛だった。だけど、偶然に出会う友達は今や名の知れ渡ったヤクザ(堀部圭亮)。2人が会っているところを、ヤクザを監視してた警察に見られる。そして、仲間と勘違いされて、郵便局員も指名手配!!主人公はチャリで逃げまくるはめに・・・

主人公が誤解に誤解を呼んでしまって、麻薬の運び屋→連続殺人犯・・・とどんどん酷い状況になってしまう・・・
笑える場面がいっぱい。殺し屋コンテストのくだりなんか最高。「レオン」とか「恋する惑星」のパロディも出てきます。
凄く笑えるんだけど、切ないところもあって、感動したりも。
この「笑い」と「切なさ」の共存は、松本人志の「笑い」にも通づるところがあると思います。松本人志の「笑い」を好きな人にお薦め。

そして、コメディっぽい邦画が好きな人はもちろん、普段、邦画を観ない人にも、お薦めしたい傑作です。
ホテル・ハイビスカス

■監督■
中江裕司

■出演■
蔵下穂波
照屋政雄
余貴美子
平良とみ


★★
『ナヴィの恋』で知られる中江祐司監督が、仲宗根みいこの同名コミックを原作に描く沖縄を舞台にした元気いっぱいのコメディ映画。『ナヴィの恋』でのおばあの切ない恋物語から一転して、今作は超が100個付くくらいにむちゃくちゃ元気でオテンバな女の子、美恵子のちょっとファンタジックな冒険物語。元気で楽しいんだけど、ちょっとホロっとくる感じ。『ナヴィの恋』を期待して観るとちょっと拍子抜けするかも。

だけど、沖縄音楽を効果的に使ったミュージカル的演出や沖縄らしい鮮やかな色彩など、中江祐司監督らしさは随所に見られて、やっぱり素敵。ホテルハイビスカスで暮らす黒人とのハーフや白人とのハーフも混在するインターナショナルな家族の陽気な姿。美恵子の元気な歌声。三線の音色。ガジュマルの木と沖縄のどこまでも青い空。森の精霊キジムナー・・・沖縄に行きたくなる度合いは『ナヴィの恋』以上かもね。

今作はオムニバス形式になってるんだけど、ちょっと『となりのトトロ』を彷彿とさせるような雰囲気の『美恵子の大冒険』や『お盆どぅーい』の章のファンタジックでノスタルジックな感じ、大好きだなー。何度観てもいい。『となりのトトロ』好きな人は観てみるといいかも。

何と言っても、この映画の見所は美恵子の元気な姿。あまりに元気で、うるさい子供嫌いな人は嫌悪感を抱くかもしれないけど、もうとにかく可愛い。微笑ましい。こっちまで元気になっちゃうよ。「ありが10匹!」「おかえリンゴ!」なんて元気に叫ぶ美恵子はやっぱり『となりのトトロ』の主人公メイを思い出させたり。のどかな風景の中に銃声が聞こえたりして、さりげなく基地問題や戦争についても描かれてるんだけど、美恵子やホテルハイビスカスの住人の元気さはそんなもの吹き飛ばしてしまう。そうそう、悲しいこともいっぱいあるけど、前を向いて元気に生きてかなきゃね。そう思わせてくれる素敵な映画です。

TOP